『人の役に立ちたい』と思うことは危ない?自己肯定感のあり方を考える

自己肯定感の調査

内閣府では、子ども・若者育成支援推進法に基づき、「子供・若者白書」を作成しています。

こちらの資料では、日本と海外の若者が比較検討した資料が公開されており、日本の若者は自己肯定感が低い、ということが報告されています。

このような調査をもとにして、自己肯定感を測っているわけですが、ほかにも、

▶︎ 自分には長所があると思う
▶︎ 自分の考えを相手にはっきり伝えることができる
▶︎ わからないことも意欲的に取り組むことができる

などの質問があります。

内閣府『令和元年版 子供・若者白書』

https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/r01gaiyou/pdf/b1_00_01_01.pdf



自己肯定感は生きる上で重要と言われますので、この若者の自己肯定感を高めるような政策が重要であるとされます。

また、自己肯定感は、子どもたち自信もよく聞く言葉です。上のような調査は内閣府だけでなく、文科省や各自治体でも行われて、子どもたちの自己肯定感は調査されています。

しかし、この「自己肯定感」は大切と言われる一方で、子どもの成長に負の面もあると言われています。

人の行動の獲得

人の行動に関する研究では、考え方や価値観を知った時、2つの意味を学習すると言われます。

例えば、中学生の男の子が体育祭の徒競走で1位になりました。

そして、周囲から、
「1位すごいね!」「足が早くてカッコいいね!」
などの評価を受けます。

この時に、
「1位=すごい!カッコいい!」
というそのままの意味を学習します。

そして同時に、
「1位ではない=すごくない、カッコ悪い」
という反対のことも学習するのです。

他にも、怒鳴る先生のクラスの子どもは、先生がいない時に騒いでトラブルを起こす傾向があります。

これは、
「怒鳴る先生がいる時」→「怒られるから騒がない」
と学習すると同時に、
「怒鳴る先生がいない時」→「怒鳴られないから騒げる」
という反対のパターンも学習しているからです。

この反対のパターンも学習することを考えると、「競争的な環境」では、
「順位が良い」→「褒められる・カッコいい」
「順位が悪い」→「褒められない・カッコ悪い」

と学習をするので、極端に考えると「1位以外は全員カッコ悪い」と言う認識をしてしまう可能性があります。

このように、競争的な環境は、より多くの失敗体験やストレスを与えて、自己肯定感を下げてしまう可能性があるのです。

ちなみに、当然ですが、これは誰にでも当てはまるわけではありません。

例えば、徒競走で50位の子でも、
「1位になれなかったから、俺はイケてない・・・」
と思う子もいれば、
「51位の友達より良かった!」
「前回の順位より上がった!」

とポジティブに考える子も存在します。

つまり、自分だけの視点ではなく「51位の人」や「過去の自分」など、他者視点で考える力がある人は、この反対パターンに囚われることなく柔軟に物事を捉えて、考えることができると言われています。

そして現在は、この他者視点を持って物事を多角的に考える「柔軟性」が成長に非常に重要だと言われています。

ASD(自閉症スペクトラム)の人は、この柔軟性が低いために、物事を偏って考えてしまい不安状態になる子も多いです。そのため、最近の療育では「柔軟性の獲得」が大切なテーマの一つです。

自己肯定感の研究では?

話は戻りますが、最初の研究のように、

▶︎ 自分自身に満足している
▶︎ 自分には長所があると思う
▶︎ 自分の考えを相手にはっきり伝えることができる
▶︎ わからないことも意欲的に取り組むことができる

と言うイメージで自己肯定感を捉えていると、

▶︎ 自分自身に満足している
満足していない自分はダメなんだ
▶︎ 自分には長所があると思う
長所がない自分はダメなんだ
▶︎ 自分の考えを相手にはっきり伝えることができる
はっきり伝えられない自分はダメな人間なんだ
▶︎ わからないことも意欲的に取り組むことができる
わからないと不安になってしまう自分はダメなんだ

と反対の意味で伝わってしまう(感じ取ってしまう)子どもがいると言うことになります。

臨床心理学者で立命館大学名誉教授である高垣忠一郎教授は、以下のように紹介しています。

先の教師の言葉にひきつければ,
「他人の役に立つ,まんざらでもない自分」
に気づく以前に,自分が安心してそこに居られる,自分の存在そのものが承認され,受け容れられているという安心感を充分に味わうことが必要な人間がいるということである。

その辺の事情を配慮しないで先のような意味での「自己肯定感」をもつことを期待し要求すると,
「他人の役に立つまんざらでもない自分」
であることから隔てられている人間を一層の「自己否定」に追い込むことになりかねない。

高垣 忠一郎(2009)『立命館産業社会論集』(第45巻第1号)


「他人の役に立っているか?」
を問う前に、
「自分は自分であって良い」
という安心感をもつことが大切ですね(^ ^)

最後に

今回は、自己肯定感のあり方について紹介しました。

言葉というのは、思ったより複雑な捉え方をされます。ぜひ、支援者から多角的に、柔軟に考えて、子どもたちに「自分は自分であって良い」と思える自己肯定感を与えてあげるようにしましょう!

以上、参考になれば幸いです(^ ^)

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